【出前講座】アーティストとエンジニアの共同作業を通じて、新しい発想や制作方法を学ぶ|京都芸術大学でゲスト講師として参加

2024年11月、京都芸術大学写真・映像コースの水木先生の授業に特別ゲストとしてYAMでAM Specialsitとして活躍する深見と松田が登壇し、3Dプリンターやデジタルファブリケーションを用いた制作やアートと技術の融合について語る特別講義が行われました。
今回の講義では“エンジニアの視点”を取り入れた内容となりました。アートとエンジニアリングが融合する場面は、写真や映像制作においても避けて通れない要素です。
「どうやって専門的な技術を作品に活かすのか」「共同制作の面白さと難しさはどこにあるのか」を掘り下げていきました。
\こちらの水木先生へのインタビュー記事も合わせてお読みください!/
「デジタルファブリケーションで広がるアートの可能性、先駆植物を樹脂の積層で表現する」
https://www.yam-kyoto.com/post/story-mizuki
YOKOITOと講師紹介
水木先生:
今日のテーマは“アーティストとエンジニアの共同”がテーマです。
自分の作品を作る時にエンジニアさんにサポートをお願いすることがあって、そこでYOKOITOさんを知りました。学内のウルトラファクトリーにも機材はあるけど、どうしても限界があるので、より専門的な技術やアプローチが欲しいときに相談しているんです。
会社についてと自己紹介をお願いします。
深見:
YOKOITOの深見です。
弊社は2014年から“デジタルファブリケーションを使って、あらゆるアイデアを形にできる社会を目指す”をミッションに3Dプリンターを使った製作物をメインでやっている会社で、京都市内に事務所があります。デジタル技術を使って大型の展示物やモニュメントを作ることも多いですし、アーティストさんや、大学、企業とコラボレーションする案件も増えました。また装置販売や講習会もやっているので、3Dプリンターを導入したいとか、設計の仕方を覚えたいという方のサポートもしています。いろんな種類の機械をそろえているので、見学したい方はいつでも連絡してください。
個人的には、昔この大学の通信課程で建築コースにいたので、久しぶりにキャンパスに来れて懐かしいです。趣味はジムに行くこととDJですね。今日は皆さんとお話しできるのを楽しみにしています。
松田:
YOKOITOの松田です。
お客さんから“こういう形にしたい”って話を聞いて、それをどう実現していくか、どの素材を使うかなどを一緒に考える仕事です。大学では映像系を学んでいて、CGやゲームにも興味を持っていました。ゲームや絵を作るのは今でも趣味ですね。3Dプリンターを使うようになって感じたのは、デジタル上で完結していたものを“本当に形にする”となると、強度とか割れやすさとか、物理的な問題が出てくるところ。そこが映像やCGだけでは味わえなかった新鮮さでもあります。今日はよろしくお願いします。
YAMの技術協力で完成したアカメガシワの作品制作

水木先生:
今回、取り組んだ作品のテーマが“アカメガシワ”という雑草でした。これは先駆植物といって、焼け野原など何もないところに最初に生えて生態系を作っていく性質がある。都市にもたくさん生えていますが、伸びるスピードが速いからか、人が気づく前に刈り取られたり踏まれたりしがちなんです。
僕はそこに“自然と人工の境界”を感じて、3Dプリンターで半透明の雑草彫刻を作ることにしました。サポート材など、人間の手が入る要素と雑草が絡み合った状態が面白いかなと思って。それをYOKOITOさんにお願いして、いろいろ試行錯誤してもらっています。
松田:
普通は、サポート材は要らないものだからできるだけ減らしてキレイに作るんです。でも今回の作品では、“サポート材ごと見せたい”という要望があって、あえて不効率な向きに配置して大量に発生させるんですよ。しかも、壊れてもいいという。普段の制作と真逆なので最初は抵抗もありましたけど、やってみると確かに雑草感が出るんですよね。“踏まれたり壊されたりしても存在している”感じがしました。
深見:
うちは普段、できるだけサポート材を減らし、壊れないように仕上げて納品するのが当然なんです。でも今回は“壊れたらむしろ面白い”“サポート材が作品の一部”という発想だから、最初は『大丈夫?』って思いました(笑)。ただ実際やってみると“いわゆる失敗を受け入れる”って雑草っぽいですよね。普段ならトラブルと思うことが、今回はプラスになる。エンジニアとしても発想がガラッと変わる経験でした。

水木先生:
実は打ち合わせでYOKOITOさんに行った時に、スタッフの方が誤って蹴って壊してしまったパーツがあったんですよ。普通は“ああ、すみません!”となるところを、僕は『ぜひそれも作品に使わせてください』と(笑)。踏まれたり割れたりするのが雑草の宿命だし、それを含めて“境界”を表現できるんじゃないかと思ったんです。
深見:
普段ならエラーはゼロに近づけるのが製造としては当然です。でもアーティスト視点だと、エラーや壊れが新たな価値になる。そこで“これはどんな壊れ方するかな?”とか、“あえてサポート材いっぱい付けたらどうなるかな?”っていう実験精神が強くなるんですよ。僕らも“これ失敗じゃなくて、いい感じの失敗かも?”って思うようになりました。
水木先生:
いや、本当に“失敗したほうが雑草っぽい”から、むしろ壊してみたらどうだろうとか、途中でプリンター止めてみたらどうだろう、とどんどんアイデアが出るんです。普段ならそんなことしないけど、共同制作だとエンジニアの経験で“途中で止めるならあと何分後がいい”とか意見をもらえて、さらに発想が膨らむんですよね。
データ作成とデジタルだからできること

松田:
葉っぱの形を何種類か作って、それを茎につなげるんですけど、普通は可能な限り耐久性を高めたり、サポート材が少なくなる向きでプリントします。でも今回は“不安定な角度に傾けて、トラス状のサポートを大量に出す”みたいなセッティングをしたり、細い部分は折れやすいから割れたら面白いかもしれないとか。
それを毎回、水木先生に見てもらって、『ここはもうちょっと太くします?』『あえて細いままにしましょうか』っていう調整をするんです。最初は抵抗がありましたけど、やってみると『あ、こうなるんだ』とか『この壊れ方は予想外だけど面白い』とか、すごい発見がありました。
水木先生:
僕は3Dプリンターを単なるツールじゃなくて、ある意味“共作者”と思っていて、機械が生むバグやエラーを活かしたいんです。そのためにはエンジニアとのやり取りが大事で、『このぐらいの層の厚みならサポートがこうつきますね』『ここで止めると葉っぱが半分だけプリントされる形になりますね』みたいな、メールだけでは伝わらない相談が必要になります。だから実際に現場で打ち合わせして、プレビュー画面とか実物を見ながら“こんなはずじゃなかった”を逆に楽しもうと思ってます。
共同制作から学べること
深見:
いつもは“壊れない・サポート材少なく・エラーゼロ”が鉄板なんですが、今回は“壊れる・サポート材大歓迎・エラーも面白い”ですから(笑)。でも作家さんがちゃんとそれを求めていて、納得してるなら全然アリなんですよね。コストや時間は増えるかもしれないけど、作品の世界観に合うなら僕らもできるだけやりますし、それが成果に繋がるのは見ていても面白いです。
水木先生:
「学生のみんなも“失敗”って言うとネガティブに思うかもしれないけど、それこそ雑草のように“踏まれても意味が出る”ケースがあるかもしれない。だから、外部のエンジニアさんに頼むときも、ただ丸投げするんじゃなくて、“こんなことしてみたい”“こうなったら面白いんじゃないか”って提案してみると、意外な形が生まれます。直接会って話し合いながら作るのが大事ですね。
おわりに
今回の講義では、アーティストが掲げるコンセプトとエンジニアの技術・発想力が、互いを刺激し合うことで新たな表現が生まれるということが分かりました。
技術とアートの融合がもたらす豊かな可能性を水木先生の制作事例から見い出し、参加した学生たちにとってのヒントになることを期待しています。

\AM Specialistの仕事についてはこちらもお読みください!/
【社員インタビュー】「AM Specialist / AM Operatorの仕事を知る」
▶︎ https://www.yam-kyoto.com/post/interview-am-specialist
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