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YAMでは新しくMJF方式3Dプリンター「HP Jet Fusion 5600 3Dプリンティングソリューション」を国内で初導入しました。
MJF方式の解説やSLS方式(粉末焼結方式)との違いを実際の造形物で比較しながら解説いたします。
樹脂の3Dプリンタについて
YAMでは樹脂AM (Additive Manufacuturing / 3Dプリンタ) を中心に造形機械の販売や3Dプリントサービスを展開しています。樹脂3D造形方式の名称は略称、日本語の名称を合わせると本当に沢山ありますが、現在大きく4つに分類されます。
その他3D造形方式の詳しい解説はこちら
材料押出/ Material Extrusion (MEX)
その他の名称:熱溶解積層、FDM、FFF、FGF、PEM
材料:固形のフィラメントやペレット(熱可塑性樹脂)
価格:数万円から購入可能
安価かつワークフローも比較的簡単で、最もポピュラーな方式。ホビーユースでの購入も多く一般的な3Dプリンタのイメージはこの方式。
液槽光重合/ Vat Photopolymerization (VPP)
その他の名称:光造形、SLA、MSLA、DLP、LCD
材料:液体レジン(光硬化性樹脂)
価格:数万から購入可能
洗浄などの後処理が必要。射出成形品のような表面精度で、材料押出方式と比べて繊細な表現が可能。最初に実用化された方式で、現在は 個人作家などプロシューマーに人気。
材料噴射/ Material Jetting (MJT)
材料:光硬化性樹脂など
価格:数百万から購入可能
フルカラーで造形したり、サポート材を別の材料での出力が可能。フルカラータイプはデータの状態で加飾できる。サポート材を水溶性の材料にすることで精度を保ちつつも後処理の手間を最小限にとどめることもできる。
粉末床溶融結合/ Powder Bed Fusion (PBF)
その他の名称:SLS、MJF
材料:粉末状の樹脂(熱可塑性樹脂)
価格:数百万から購入可能
サポート材が不要で、粉を取り除く後処理が必要。強度や精度が出るため、自動車のパーツなど工業用3Dプリンターとして使用されている方式。
今回YAMに導入したMJF方式はPBF方式の1つに分類されています。このPBF方式は、自動車、航空宇宙をはじめ、義肢装具やメガネなどの最終製品として幅広い分野で採用されています。
PBF方式の造形方法と質感
PBF方式は正式名称をPowder Bed Fusion、日本語では粉末床溶解積層方式などと訳されます。こちらは名前の通り、粉体材料を一層ずつ造形面に敷き詰めながら部分的に溶解・焼結させて3Dモデル通りに造形する方式です。
このPBF方式は、造形エリアに敷き詰められた材料がサポートの代わりを果たすため別素材のサポート材やサポートの造形が不要です。また、材料は熱可塑性樹脂を使用します。PBF方式ではナイロン樹脂が一番スタンダードな材料で、強度に優れ最終製品にも適しています。
サポートが不要なことや異方性も比較的少ないため、他の樹脂3Dプリンタ造形方式と比べて、より造形の自由度が高く、DfAMで用いられるラティス構造などの細かい造形とも相性が良い点も大きな特徴です。
一方で表面品質はざらざらしており石のような質感です。これを射出成形品のようにツルっとさせるには溶剤噴霧や塗装、切削加工での後処理などを行う必要があります。(写真は左からブラスト処理、溶剤処理、塗装)
PBF方式の2つの方式
樹脂のPBF方式は細分化するとMJF (Multi Jet Fusion)方式とSLS (Selective Laser Sintering)方式の2つの方式に分けられます。今回YAMプリントセンターに新しく導入された「HP Jet Fusion 5600 3Dプリンティングソリューション」 はMJF方式です。
粉末材料を使って、一層ずつ粉の層を積み上げていくのはどちらも同じですが、造形物を固める方法の違いにあります。SLS (Selective Laser Sintering)方式、日本語では「粉末焼結積層方式」や「選択的レーザー焼結」とも呼ばれます。その名の通り、造形部分をレーザーによって焼結させ、造形する方式です。
一方でMJF (Multi Jet Fusion)方式、「マルチジェットフュージョン方式」はHP社が開発した独自技術であり、造形スピードと造形の安定性に優れています。MJF方式では造形部分に薬剤(溶融促進材)を噴射し、ヒーターの熱で薬剤を噴射された部分だけ溶融・結合させて造形する方式です。
▼HP Jet Fusion 5600の造形の様子
SLSとMJF 造形物の比較
このMJF方式とSLS方式の違いを実際の造形物で比較してみました。
MJF方式のプリンターは「HP Jet Fusion 5600 3Dプリンティングソリューション」、SLS方式は「Formlabs Fuse 1+」の造形物で比較しています。材料はどちらも各メーカーで販売されているPA12(ナイロン12)のグレーパウダーを使用しています。
MJF方式は元の粉が真っ白で、結合促進剤が黒いので、明るいグレー。FormlabsのSLSはダークグレーです。同じグレーパウダーでも染色の具合が変わりそうなので、黒染めもやってみました。写真だと分かりにくいですが、SLSはほんの少し赤みが出ています。
サンプルの1mmの厚さの板をグニグニ曲げて遊んでみました。厚さ1mmの部分を曲げた感じはMJFの方がコシがある印象。折れるまで曲げてみましたが、MJFの方がねっちりしていてかなり靱性があります。MJFは溶融しているので、焼結するSLSと比較して強く結合するのが関係しているようです。他にも造形方向の違いも関係するので、また検証してみます。
ちなみにいつもFuse 1で出力している名刺ケースをMJFで出力してみるとヒンジ部分がくっついてしまいました。SLS用のデータをMJFで造形する場合は要注意です。部品同士のクリアランスを少なくしたい場合はSLSでの造形がおすすめです。
まとめ
今回はYAMに新しく導入されたMJF方式について、SLS方式と比較しながら解説しました。同じPBF方式でもMJFとSLSは物性の部分に特に違いが出るので、用途に合った方式を選択する必要があります。
現在3DプリントサービスビジネスプランではSLS方式に加え、MJF方式での造形もご利用いただけます。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。
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